「私、クロコダイルさんには殺されたくないなぁ」

「…テメェの考えてる事は良く解らねェ…」



否解りたくもないがな、と葉巻の煙と一緒に吐き出すと女はケラケラと笑い出した。

そもそも何故俺は麦藁の船に乗っているんだ、くそっ。

ゆったりと波間を漂う船の一室で俺は新聞を広げ、女はソファの上で猫のようにゆったりと伸びていた。

眠っているのかと、そう思っていたのにコイツは唐突に口を開いた。そしてこの様だ。



「だってさー、ミイラになっちゃうんでしょ?」

「ハッ…毒殺がお望みか?」

「苦しそうだなぁ、それも」



あと串刺しも嫌だ、とは何がそんなに面白いのかくすくすと笑って言った。

そのあとはずっと物思いに耽ったように天井を見詰めてはハァ、と溜め息を吐く。

嫌に静かで気味が悪ィな…いやいや、静かでいいじゃねぇか。

普段のコイツは賑やか過ぎて煩い位だ。たまにはこういうのも良いじゃねぇか、と

自分に言い聞かせるも苛々は募るばかりで眉間のシワは深くなっていく。



「…欝陶しくて敵わなねェんだよ、さっきから!なに死に様ばかり考えてやがんだ!?」

「…海賊だもん、いつ死んでも可笑しくないでしょ?だったら、別にいいじゃん」



反抗的な目付きが気に入らねェな。この女の、この表情を見る度に俺は胸の辺りがざわつく。

それは欲情に似ている気がする。

いや待て何故この俺が犬みたいに尻尾振っていらん愛嬌を振り撒いたりしてる阿呆女に

欲情しなきゃならんのだ。自分を落ち着かせる為に葉巻の煙で肺を満たして吐き出す。



「Mr.3みたいに人形にして傍に置いてくれたらいいのに」

「…!だったらMr.3に殺してもらうんだな、カス」



大体俺には死体を飾って鑑賞するようなイカレた趣味はねェ。

そう言って冷たくあしらえば何故か女は「えー…?」と残念そうにこちらを見詰めてきた。

テメェそりゃどういう意味だ。しかもよりによって他の男の名前を出すとはどういう了見だ。



「砂にはしてくれないの?」

「…アァ?」

「砂になった私で砂時計でも作ってくれたらいい」

「…それは暗に俺に殺して欲しいって言ってんのか?」



とんだ天邪鬼だな。新聞をバサリと畳み紫煙の向こうのを見れば

「それもちょっと違うかなー」と小首を傾げていた。

俺は一生掛けてもお前の思考を理解出来ねェだろうな。面倒臭い事この上ない。

相手をするのも面倒だと威嚇するように睨みつけると女は怯える様子など微塵もなく何故か照れたように笑いながら



「人生最後に見る顔が好きな人だったら最高だなって、思っただけ」





(あ!クロコダイルさんが死にかけた私を助け起こしてくれたら良いんだ!)

(ハッ、有り得ねェよ馬鹿女が)

(わー解決だね!)

(人の話を聞け…!)