「おー遊びに来てやったぞー。」
「うわ、外山先生…。」
「うわって何だよ。」


“お前が退屈してると思って、この忙しい外山先生が直々に遊んでやるんだから感謝しろよ?”

そう言って偉そうにニヤニヤと笑いながら外山先生は私の額を、小突いた!(いたい!)


「あー!もう何だよ!私、患者なんだかんね!?虐めないでよ!」
「なぁにが患者だよ、こんなに騒いでおいて…。」


ひとりだったら騒いだりしないで大人しくしてるっつーの…。
喉まで出かけた言葉を必死の思いで飲み込んだ、が
知らず知らずのうちに眉間に皺が寄っていたらしく結局もう一度額を小突かれた。
(私の正直者!)


「ん、なにコレ。」
「暇つぶしのゲーム。」
「高校生が何やってんだよ…。」


ガキじゃねぇんだから、と先生の奇麗な手は私から白いDSを取り上げた。
(じゃ、ジャイアン…!)


「…脳トレ?」


うっわ、年寄り臭っ!
うるせー!

小さな画面を見た先生はいつものように小首を傾げて若干呆れたような顔をした。
それでもゲームを返さないでいる辺り、実は興味あるんじゃないかと思う。


「やってみると意外にハマるんだから!」
「出来ないから躍起になってるの間違いだろぉ?」
「なっ…!」


あまりの言いように返す言葉も無く口をぱくぱくしている私をよそに
外山先生は手近にあった椅子を引き寄せてベッド脇に座った。
(ほら!結局やるじゃん!)


「ご、ごじゅうよん…ぎゃはは!!」
「…!!」


何だかんだ言っておきつつチャレンジした外山先生の結果は想像を絶する程悪かった。
さっきまで他人の事言えないくらいギャアギャア騒いでいた先生も
今ではあまりのショックに硬直しているようだ。(ざまあみろ!)


「実際、先生いくつ?」
「…30」
「…8割増し!ひっでぇ!」


ゲラゲラと笑う私と怒る外山先生。
なんだか先生の顔にいつもの余裕が無いから全然怖くない。


「ちょっと、うるさいですよ!!」


廊下からカツカツと忙しない足音が聞こえて、伊集院先生がやってきた。
こちらも相変わらずの童顔と小柄な体格のせいで全然怖くなかった。


「あ、ごめんなさ…、」
「うっせーな黙っとけ!」
「な…!」「ひど!」


直ぐに謝る私と、理不尽にも逆切れする外山先生。
対照的な反応を同時に返されて閉口した伊集院先生。
納得いかないと小さく憤慨する彼に私はこれまでの経緯を説明してあげる。


「あぁ…それで機嫌悪いんですね…」「うん、そうみたい」


小さな声でヒソヒソと、極力外山先生の神経を逆撫でしないように私たちは会話を続けた。


「…ごめんね、伊集院先生」
「えっ、あ、はい…ここ一応病院なんですから!」


一応って何だよ。そう言ってやりたかったけど目の前で躍起になってゲームしている外山先生を見たら
何故か言葉が出てこなかった。さて、これからどうしよう。


「伊集院せんせーい!朝田先生が呼んでますよ!」
「は、はい!今行きます!」


カルテを持った看護師さんが困ったように笑いながら
私たちのいる病室を覗き込んで伊集院先生を呼んだ。
先生は弾かれたように振り返ると
「ダメですよ!静かにしてて下さいね!外山先生も早く戻って下さい!」と
言い残して颯爽と駆け抜けて行った。
私も「がんばれよ!」と小さな背中に声を掛けた。


「…外山先生」
「なんだよ」
「伊集院先生にも今度脳トレやらせてみようか」

すごい面白い結果出そうな気がする!
あ、それオレも思った。



(…外山先生、さんと仲良いですよね…)(ン?なぁに?気になる?)
(ああ!もう何でも無いです!)(…妹がいたら、あんな感じなのかなー)(……。)


08.12/9 仲良し擬似兄妹とジェラシー伊集院。末っ子は面倒見が良いと聞きます。