私の学校には変わった先生が多い。
そりゃあ学校自体が普通じゃありませんから、当たり前といえば当たり前なんですけどね。
(探偵を育てる学校なんて、ここくらいなものだろう)
もちろん普通の授業もやりますけど、尾行の演習とか情報収集だとか、とにかく色々やるのです。
それで、私が気になっている先生というのが
いつも真っ黒なスーツを着て、猫背で、常に薄ら笑いを浮かべていて
破滅的に口笛が下手くそな長身痩躯の男。ケルベロスと呼ばれる謎の人物。
明らかに日本人なのにな!
本名は知らない。そもそも教師なのかも不明である。
教頭がどこからか連れてきたらしい。
ポジション的には一応保健医の地位に就いている。
(…ということは先生なのか、やっぱり)
しかし彼の強烈な個性故、一般の学校ならば憩いの場であるはずの保健室には滅多に生徒は近付こうとしないのである。
数馬なんか具合悪いの我慢して授業中にぶっ倒れた事があった。
(そんなに嫌か)(先生かわいそう)
私はケルベロスが嫌いではないのだ。むしろ興味津々です。
この前ひっそりとメグに仄めかしてみたら、物凄い目で見られてしまった。

「貴女くらいですよ、自分からここに来るのは」
「えー」

やっぱり生徒に避けられている事は自覚済みだったらしい。

「来ちゃダメですか?」
「具合が悪いなら、どうぞいらしてください」

わぁ露骨な条件つけちゃって。まったく分かりやすい。
然し七海先生の授業の度に保健室に足を運ばれては仕方がないのかもしれない。
私も薄々罪悪感を感じてはいるのです。

「七海くんも可哀相に…」
「別に七海先生が嫌いな訳じゃないもん。テンションに着いていけないだけだもん」
「そうですか、ふふ」

本当は先生だって可哀相だなんて微塵も思っていないくせにね!
彼らは犬猿の仲として校内でも有名なのだ。

「そうですか…残念だなぁ。私、基本的に健康体なんです」

そう言って無駄に寝心地の良いベッドから飛び降りる。
(なんかウチの学校結構お金持ってるみたい)

「…待ってください、さん」
「はい?」
「今は授業中です。まだここにいて良いですよ」

…よく分からない。
そうですか、と言って今度はソファに腰を下ろす。
ちなみにこちらも無駄に座り心地が良いのです。
すると必然的に業務用のデスクと向かい合う形になって、ケルベロスと目があった。
相変わらず気味悪い薄ら笑いを浮かべてじっと私を見つめている。

「…あの」
「別に貴女が遊びに来るのが嫌という訳ではありません」

最後まで言わせろよ、と言いたかったのだが
偶然にも…否彼は予測していただろうが、私が聞きたかった答えが聞けたので放置した。

終末を告げるベルが校内に鳴り響いた。

「今度は真面目に授業受けて下さいね」

そういって廊下に送り出された私の背中に聞こえた別れの挨拶が心なしか楽しそうだったので、また遊びに来てやろうと思う。
ドアが閉まる直前に小さな声で「では、また明日」と聞こえた気がした。


Hello!Teacher!

08.5/30 何故か消えていたので、手直ししてアップしました…。