「ケルベロス…?」
私の目の前には全く予想だにしない光景があった。
おそらく彼ほど生活感の無い人間はいないであろうケルベロスが眠っている。
なんだか、よく知った動物の意外な生態系を見たような、そんな驚きがあった。
(ケルベロスって眠るんだ…)
(若干失礼かとは思うけど)
よくよく思い出してみると何年も一緒にいるのに彼の寝顔など見たことが無かったことに気付く。
本当に犬みたいだと思った。
(意外と可愛いじゃない、寝顔…)
それと同時に、この男の事だから実は起きていた、なんて結末も予想してみる。
予想はしてみたものの、無防備な寝顔を見ていたら、妙に愛おしく思えてきて
「…いつもありがとう」と呟いてから、ちょっとした悪戯の積もりで、彼の額に唇を落としてみた。
しかし思いの外に恥ずかしくなってしまって、少しまごついてから
足早にその場を立ち去ることにした。
(いつもこれくらい素直だったら可愛いんですけどね)
(…今は額で我慢しましょうか)
08.4/1 ケルベロスの寝顔って想像できない。