私たち二人の関係は一体何と形容されるべきなのだろう。
世間で言う“恋人”がするような行為を私たちはしているけれど
彼は私の教育係であり、保護者であり、従僕なのである。
それでもケルベロスの隣にいるとどうしようもなく幸せで胸が高鳴るのだから
私はきっと彼に恋をしているんだと思う。
でも、悲しいことにケルベロスが私の事をどう思っているのかよく分からない。
ただでさえ何を考えているんだかよく分からないような奴だし。
正直どうだっていい問題なのかもしれないけど、やっぱり気になる。
仮に私たちが恋人というジャンルに適合するものだったとして
今の形でいいんだろうか?特に、私は。
なんだか尽くされてばかりで申し訳ない気持ちでいっぱいなのだ。
ひどく今更かも知れないけれど、たまには私がケルベロスに
何かしてあげたって良いと思う。与えられてばかりというのも悲しい。
大きなベッドの上で、ぎゅっと膝を抱えて溜め息を吐いた。
好きな人に何かしてあげたいと思うのは何の不思議もない、自然な感情だと思うの。

私と様の関係は決して一つの単語では言い表せないものだと思うのです。
いずれにせよ私は現状にとても満足していますし決して不満など無いのですが。
私は様を愛おしいと感じています。掛けがえのない方だと思っています。
周囲の人間は可笑しいと感じるかもしれませんが私にとっては彼女以上に大きな存在などないのです。
そしてそんな様が私の目の前で物思いに耽って悲しげな顔をされて膝を抱えているのですから
当然私も心穏やかではいられません。どうかなさいましたか?と声を掛けると
様は心配そうな顔でこう言いました。

「ケルベロス、私このままでいいのかなぁ?」
「…と、言いますと」
「だって私、いつもケルベロスに守ってもらってばかりで」

何の役にも立ててないの、優しくしてもらってばかりで

「わ、私だってケルベロスの事、す、好きなのに…!」

恥ずかしげに視線を逸らしたまま早口で捲くし立てた彼女は未だに頬を朱に染めながら
私を見ようとはしない。そんな様子に思わずにやけそうになるのを必死に抑え…
あぁやはり無理ですね。きっと今の私は笑ってるでしょう。
それに気付かれないように様を優しく抱きしめる。

「私は今のままで十分幸せですよ?」
「そういうのって、ずるい」

額をこつんと私の胸元に宛てて様は小さく呟いた。
そう言われてしまうと私は何も返せなくなってしまう。
嬉しいようなもどかしいようなモヤモヤとした気持ちを持て余していると
様はハッと顔を上げて私の目をしっかりと見据えながら言い放った。

「何か私にしてほしい事、言って?」

くらり、と甘い眩暈が私を襲った。嗚呼様、そんな事を他の男に仰っしゃってはいけませんよ。絶対に。
賢いくせに妙なところで気付きの悪い彼女は私の返事を待ち侘びるかのようにきらきらした瞳を
こちらに向けている。どうするおつもりなんですか、私が卑猥な願い事を言ったりなんかしたら。
大体昔から言っているでしょう、男を簡単にベッドの上に乗せるなと。なかなか次の言葉を紡がない私を
心配そうに見つめる様を安心させるように右手を白い頬に添えた。


「では…膝枕をしていただけませんか?」
「え…?」
「聞いて頂けませんか?」
「そ、そんな事でいいの…?」

拍子抜けしたような間の抜けた声を出した様には普段のような威厳は跡形も無く
そこにあるのは年相応な愛らしい少女の姿だった。

「最近、仕事ばかりで疲れていたので。様さえ良ければ」
「…うん」

スッと私の上から退いた彼女の膝の上にゆっくりと頭を預ける。
柔らかく温かな感触にそっと瞼を伏せると急に睡魔が襲ってきた。
やはり疲れていたのは本当だったんですねぇ、と自分の事ながらも他人事のようにまどろみの中で考えた。
ふわり、と誰かが髪を撫でる感覚を覚えて目を開けると少し恥ずかしそうにはにかんだ様が
ゆっくりとその華奢な掌で慈しむように私の頭を撫でている姿があった。

「いつもありがとう。…ちょっとくらい役に立てたかなぁ?」
「えぇ、とても嬉しいですよ。様」
「あはは、なんか不思議な感じ」
「ふふ。またこうして頂けますか?」
「うん、いつだっていいよ」


幸福なのは私の方のはずなのに、酷く幸せそうに微笑む様を見上げながら私は再び瞼を閉じた。


(おやすみ、ケルベロス)



鳴海様からのリクエストでケルorヨコヤで甘(膝枕)でした。
普通にウチのヒロイン設定で書いてしまったんですがこれでよかったのでしょうか…。
遅くなってしまい申し訳ありません!リクエストありがとうございました!