兄貴の事、そりゃあ尊敬してますぜ。してますけど…それとこれとは話は別でさぁ。

兄貴と買い物をしていたら街中のジェラート屋で見知った顔をみつけた。 ここはオレ達のアジトがある街から少し離れた大通りで沢山の人が行き交う賑やかな場所だ。 子供たちが無邪気に走り回ったり、夕飯の買い物をしてる主婦が野菜と睨めっこしていたり、 カップルが幸せそうにデートしていたりする。そんな中で一人ジェラートを ぱくついている姉貴を見つけるのは容易かった。 ただでさえ人目を引く容姿の持ち主だし。

「プロシュート兄ィ、あれ姉貴じゃあないですかィ?」
「どこだ?…あ、いた」
「姉貴ィ!姉貴ィーッ!」

大きな声で名前を呼んだらキョロキョロと辺りを見回し、視界にオイラ達を確認すると嬉しそうな顔をして にこりと微笑みながら手を振ってくれた。多分、オイラ達以外にも姉貴を見てる男は数名いるはずだ。 こんなに綺麗に笑う人が暗殺者だなんて誰も思わねえんじゃあねえか?とか考えながら手を振り返すと、 隣にいた兄貴は既に長い足でスタスタと姉貴のもとへ向かっていた。俺は置いていかれないように急いで走り出す。 兄貴は歩くのが速い。黒いマフラーが兄貴の動きに合わせてひらひらしている。 そう、今は冬だ。それでも姉貴は優雅な手つきでジェラートを掬って食べるという動作を不定期に繰り返していた。 正直見てるこっちが寒々しいが姉貴は季節感とか周囲の視線なんてものはちっとも気にしちゃいないらしい。 それもそれで姉貴らしくて良いと思うけどさ。 しっかり着込んだ品の良いコートにマフラーがちぐはぐで可笑しかった。

「こんな所で会うなんて珍しいね…なによ、その目は」
「…真冬にジェラートとか頭オカシイんじゃあねえのか?」
「冬に食べても美味いもんは美味い」
「阿呆かッ!」

プロシュート兄貴が姉貴の額を勢い良く小突いた。姉貴は「いたッ」と小さくよろめいてから 恨めしそうなじっとりとした目つきで兄貴を見た。

「…ゆっくり食べても溶けないというメリットがある」
「ちんたら食ってんのが悪ィんだろうが」

道行く人々がちらちらと二人を見ている。そりゃ姉貴が真冬にジェラート食ってるって事も多少はあるかもしんねぇけど… 一見モデルと見紛う程の男女が会話してるってだけで人目を引くには十分だ。 この二人は自分が周囲に与えてる影響とか全然気付いてないみてぇだし…やっぱり兄貴と姉貴はすげぇや…! なんて考えながらオイラはぼーっと二人を見てた。兄貴は勿論強くてカッコイイけど姉貴も美人だし強ェんだよなぁ…。 頼もしい先輩の二人にオイラは甘えてばかりだ。兄貴の鉄拳制裁はちょっと…いや、かなり怖いけど…。

「…それ一口くれ」
「ん」

結局食べたくなっちゃったんですかぃ、兄貴。姉貴は細い指で摘んだスプーンで白いジェラートを掬うと 何の躊躇いもなく兄貴の口許へと運んだ。兄貴も兄貴でそれは至極当たり前の事だと言わんばかりにして バニラと思われる白をぱくりと食べた。正に二人の世界だ。見てる方は恥ずかしいんだって気付いて下さいよ! っていうか勝手に帰っても気付かれないんじゃないですかぃ…?

「お、うまい」
「でしょ。…ペッシも食べる?」
「いえ!オイラはいいですっ!」
「そう?美味しいのに…」

勿体無い…と眉をハの字にして呟く姉貴に唐突に話を振られて慌てふためくオイラ。てか間接キスですぜ兄貴…! ああでもこれくらいで照れてちゃあまたマンモーニって言われちまう…ッ! 表情に出さないようにと一生懸命なオイラを見て兄貴は小さくフフンと鼻で笑ったが(やっぱりバレちまった) 姉貴はだいぶ小さくなったバニラを掬うのに夢中でこっちを見ちゃあいなかった。

「もう一口くれ」
「…ん」
「そっちも」
「ちょっと、食べるなら自分で買ってよ!」
「こうやって食うのが良いんだろうが。野望な事言うんじゃあねえよ」
「…プロシュートって馬鹿でしょ」

ニィと笑って言ったプロシュート兄貴に姉貴は少し照れたように白い頬を染めながら 赤(ラズベリー…かな?)を兄貴の口許へと運んだ。あぁ、やっぱオイラ帰ろうかなぁ。

「おめぇ、こんなんばっか食ってっから身体冷やすんだよ」
「そうかな、もともと冷え性なんだけど」
「一緒に寝てると足が冷たくてビビるんだよ」
「オレが暖めてやるくらいの事言ってよ」
「調子乗ってンじゃねえ!」
「いたッ」

兄貴、オレちょっと用事思い出したんで先帰ります。そう言ってオイラは ジェラテリアを後にした。やっぱこの二人バカップルだ。

(あーあ、ペッシ帰っちゃった)(気ィ利くじゃねえか、なぁ?)



ペッシの一人称ってオレだっけオイラだったっけ。
てかペッシをどんだけマンモーニにするかの匙加減がよく分からないよ兄貴