「…お前さっきから何見てンだよ、気持ち悪ィ」
「えっ、いや、あの!」
「言いてェ事があるならさっさと言えッ!」
「ご、ごめんなさ…!」

なんて美しいひとなんだろうって、初めて会ったときからずっと思ってた。 瞬きしたら音がしそうなくらい長い睫毛とか(下睫毛までバシバシなのだ。羨ましい)、 水晶みたいに澄み切ったアクアマリンの瞳とか、人形みたいに整った顔立ちとか。 まるで存在自体が美術品みたいな人なのに。

「プロシュート怖いんだもん…」
「アァ!?」

ンな事でビビってるようじゃあまだまだマンモーニだな、と私を鼻で笑った プロシュートは流れるような動作で高そうなスーツのポケットから煙草を取り出した。 分かってはいたけど火を点けるのに静かに伏せられた睫毛の長さに改めて驚く。 マスカラでもしてるんじゃないか?さっき怒られたばっかなのに私は再びまじまじと彼の整った顔を観察し始めた。

「さっきからよォー俺の顔に何か付いてンのか?」
「ん、綺麗な顔してるなぁって思って眺めてた」
「は」

プロシュートは形の良い眉毛を右側だけ器用に吊り上げ、盛大な溜め息を紫煙と一緒に吐き出した。 メローネじゃないけど、そんな怒ってるんだか呆れてるんだか分からない表情が非常にベネだと思う。 あ、違うの。私は変態じゃないのよ。

「…そんな事言われて喜ぶ男はいねェ」
「うん、少なくともプロシュートが喜ばない事は知ってる」
「お前性格歪んできたな」
「悪気は無いよ」
「余計タチ悪ィだろうが」

あ、その表情も好き。苦笑いにしては屈託の無いソレは彼を少しだけ幼く見せる。 うん、すごく可愛い。美しい彼は眺めてるだけで楽しいんだけど触ってみたいと思ってしまうのは 何等不思議な事じゃない、はず。私はゆっくりと席を離れてソファーに踏ん反り返ってるプロシュートの隣に腰掛けた。

「ね、髪触っていい?」
「…やっぱお前今日変だぞ」

酔ってンのか?とその美しい顔をずいっと近づけて大きな両手で私の顔を挟む。 近い。いつも思うけどこの人顔近い。私の鼓動がどれだけ早鐘を打っているかなんて彼は多分分かってない。 ちょっとだけ憎らしいと思う。こつんと額を合わせて真面目な顔で「熱はねぇな…」とか言ってるくらいだもんね。 リーダーも大概天然だけどプロシュートも結構良い線いってるよ。

「前から思ってたよ。…髪、結構長さあるでしょ?」
「ヤメロ」
「うっわサラサラ!」
「人の話を聞けッ!」
「いいじゃん、ちゃんと元に戻すから」
「そういう問題じゃあねぇッ!」
「同じ物食べてるのにどうしてこうも違うのか…」

ちゃんとケアしてるはずの私よりも綺麗とかどういうことだ。シャンプー何使ってるのかな…。 幾つかに束ねている髪を下から順に解いていく。細い髪が指を通る心地良い感触に感嘆符を放つと プロシュートは僅かに眉間に皺を作った。あ、怒ってる。待って、あと一つで全部解ける…

「あっはは、髪下ろしてるの初めて見た!」
「…老わすぞ、コラ」
「えー、褒めてるのに。本当羨ましい」

女の人みたい、という言葉が危なく喉元まで出かかっていたがしっかりと噛み殺しておいた。 あー、だから綺麗って言われるの嫌そうだったのか。もし口に出してたら確実に殺されてたと思う。 そしたら直触りだから一瞬で老いてしまうんだろうな。

「…、余計な事考えてんだろ」
「よく分かったね。グレイトフル・デッドの事考えてた」
「オメェの目ぇ見りゃ分かる」

「…今は俺の事だけ考えてろ」

ニィ、と薄い唇を吊り上げて笑う彼の表情は自信に満ちていた。 なんだ、やっぱり満更でもないんじゃん!


(…いちゃつくなら外でやってくれないか)
(なんだよリーダー、妬いてんのかぁ?)
(ペッシの教育に悪い)(…)