クリスマス、つまり基督の誕生日を祝う日であるが宗教に無関心な日本人(私も例外では無いけれど)にとっては
単なるお祭りでしかない。子供たちは無邪気に…しかし最近の子供たちは賢くなってきていて
サンタクロースの存在にうっすら疑問を抱いていたりするのだが
プレゼントだけは有り難く戴き、恋人達は愛を囁きあう日なのだ。
そんな中で、私はぼーっと窓を開け放って外を眺めていた。
聖夜に浮かされた街から離れた場所にある祖父の屋敷は何時も静かだ。
肌を刺すような風が頬を撫でる。指先は徐々に冷え切っていく。
この夜を素直に喜べるような年頃でも無くなってしまったんだなぁ。
プレゼントを強請るには遅すぎるかな、と昔を思い出してみたけれど
世間でいう子供が欲しがる玩具など貰った記憶も無かったし、祖父にプレゼントを強請った記憶も無かった。
恐らく幼い私はそれを与えられても喜ばなかったであろう。
「…風邪を召されますよ、様」
「……。」
もう少し外を眺めていたかったけれど先日熱を出した身分では強く否定出来る訳もなく
やはり静かに窓を閉める事にした。その瞬間にふと暖かい空気と柔らかい光に包まれる。
振り向けば外の闇と良く似た黒い服を着たケルベロスがいた。
「…おかえり」「只今帰りました、ふふ」
一時彼が捕まってしまった頃から、私は帰ってきたケルベロスに「おかえり」を言う事にしていた。
腹立たしいけれど、あの出来事がきっかけで自分にとって彼がどれほど大きな存在なのか
はっきり分かった気がして。
彼は静かに歩み寄り、私の隣に立って窓の外の景色を見下した。
相変わらず、何を考えているのか分からない男だ。
「…外、出てたんだね」
「えぇ、仕事で」
ぎゅっとケルベロスの手を握ると、案の定とても冷たかった。
正しく言えば私の手も冷え切っていたから全然分からなかったので、冷たかったと思う。
彼の言った仕事、つまりは冥王星としての活動、という言葉を頭の中で復唱してみる。
この夜にすら、新たに罪を犯そうとしている人がいる。
そう思うとあながち聖書の言う事は間違いでは無い気がしてきた。
生まれながらに罪である、人間という存在。
そして私達は、そんな人々の醜い部分を餌にして生きているのだ、と小さく絶望した。
「…何か難しい事を考えているようですが」
「ん…クリスマスなんて無くていい…」
「…?」
救い主が生まれようが人は何も変わっちゃいないじゃないか。
なんだかとても悲しくなって目の前のケルベロスに身体を預けた。
彼は優しいから何も聞かないで抱きしめてくれる。どうせ仕事のうち、とその優しさを疑ったときもあった。
今だって自信を持って言える訳じゃないけれど、なんとなく信じてみたい気がする。
「…クリスマスは無くて良いとおっしゃいましたが、それでは私が困ります」
「え…?」
「これ、どうしたらいいんですか?」
そう言ってケルベロスが取り出したのは小さな箱で、まさかとは思ったけど中に入っていたのは指輪で
彼はあまりに吃驚して沈黙してしまった私の名前を小さく呼んだ。
「あの、これ、高かったんじゃ…?」
「贈りたかったんですよ、様に」
受け取って戴けますよね?
答えになってない…しかも質問したのは私なのに逆に質問されてしまった…。
何時もの見慣れた妖しい笑みと瞳のはずなのに、こんなにドキドキするのは何故なんだろう。
(…どの指に嵌めて欲しいですか?)(な…!)
(それを私に言わせるの!?)
08.12/24 夢サイト作って初めて迎えるクリスマスに小説書かないのは如何なものかと思い作成。
手を取って指輪を嵌める彼はとても絵になります(*´w`*)