!ヒロインはリュウくんの双子の妹設定です!
(リュウくんが家を出てから離れ離れに暮らしてます)
長く伸びた髪が鬱陶しくて、ヘアゴムを求め鏡台へ向かう。
椅子に座って前を見れば、見慣れた自分の姿が映る。真っ黒な、長い髪。
別に、この髪型が好きな訳じゃない。
ただ切ってしまえば嫌でも兄の顔を思い出してしまうから、仕方ない。
思い出したら、きっと会いたくなってしまう。
少しだけ兄が憎らしくなってしまった。鏡の向こうの私の眉間には微かな皺が浮かんでいた。
(あぁ、そうだ…)
いっそ、バッサリと切ってしまえばいいんだ。一緒に兄の事だって忘れてしまえば良い。
ユリエに頼んで切って貰おうか。否、自分でやるのが好い。
冷たく光る鋏を握り、長い髪を一房掴む。
親指と人差し指に力を込めて、漆黒を断つ感触を想像する。
(…やっぱ止めた…)
どんなことをしたって、私は兄様の代わりになんてなれない。
昂った自分を落ち着かせるように小さく深呼吸をしてから櫛を探す。しかし近くには見当たらなかった。
たぶんベッドのサイドテーブル辺りに在るだろう、と推測してみるものの
探しに行くのは面倒だと、手櫛で黒髪を一つに纏めていく、が。
(…うまく結べない)
纏めたそばからさらさらと指の間を滑り落ちていく僅かな毛束にち、と舌打ちをして
悪戦苦闘していたから部屋のドアが開いた事なんて全然気付かなかった。
「手伝いましょうか?」
「…ノックくらいしなさいよ。」
「しましたよ?」
「え、」
頑張ってましたからねぇ、と彼はいつものように笑いながら
案の定、ベッドのサイドテーブルにあった櫛を持ってきてくれた。
「…なんか情けないなぁ…」
女の癖に髪すらまともに結べないなんて。
そう思うとやはり切ってしまおうかとも思ってしまう。
しかしそれは結局なんの解決策にもならないことに気付いて、少しだけ悲しくなった。
自分の不器用さにしても、兄の事にしても、それじゃただ逃げているだけだ。
「いいじゃないですか。」
可愛いと思いますよ、不器用な様も。
びっくりして視線を上げると鏡の中のケルベロスと目があった。
「…っ、なんでお前はいつもそう恥ずかしい事をサラッと言うかな!」
「それに毎回照れている様も様ですよね、ふふふ」
「あー!もう!」
そうやって話しているうちになんだか悩んでるのが馬鹿馬鹿しく思えてきて、ふと見た鏡の中の私は笑っていた。
(さ、出来ましたよ。)(ん、ありがと。)
(…私はその長い髪、よくお似合いだと思います。)
(…切るのはもう少し先にしよう。)
08.10/22 天然バカップルだと良い。ケルはサラッと気障な台詞を吐くと思う。