つまんないつまんないつまんない!
長い入院生活というのは予想以上に疲れるものでした。
ただベッドに寝転がって1日を過ごす訳ですが案の定何もやることなどないのです。
ここまで暇すぎると普段自分は何してたっけ?と何気ない日常すら忘れてしまうもので。
小さな箱庭のような病棟の中で担当医の目を盗んで探索するのも飽きてしまった。
最近は血管外科医の外山先生や麻酔医の小高姉さまと一緒にお喋りしたり
北洋の先生方と無駄に仲良くなってしまいました。
(もちろんとても喜ばしいことですよ!)
特に外山先生とは妙に意気投合してしまって既に病室の常連客と化している。
藤吉先生も気を遣って話しかけてくれたり(まさに紳士だ!)
明真からも…荒瀬先生?だっけ。
なんか虎猫みたいな金髪の先生がよく遊びに来る。
仕事ちゃんとしているんだろうかと余計な事を考えてみたり。
本人に聞いたところによると、朝田先生率いるチームドラゴン(かっこいい!)の
麻酔医を担当していたが、最近はみんなバラバラになってしまって
「ちょうひま!!」らしい。
(だからといって職務放棄して良いものか)
とにかくアットホームな病院です、北洋病院。
(この場を借りて宣伝させて頂きます。とっても良い所なんですよ)

さて、先ほど申し上げたように
自分の頭の中に地図を作製できるくらいに徘徊しまくった病棟ですが
私が迂闊に大冒険しないように厳しく目を光らせている担当医というのが
「あ!!さんまた勝手に病室抜け出して何やってるんですか!!」
はい来ました。これです。伊集院登さんです。
真ん中で分けられた前髪に眼鏡。
無駄に純真無垢な瞳に童顔。
おまけに小柄ときたものだから、高校生の私とあんまり見た目は変わらない。
ひょこひょこと忙しそうに廊下を走り回る姿はまさに子犬です。
長身の朝田先生とよく一緒にいるので、より一層引き立ちます。
前に年齢を聞いてみたら驚愕の28歳(三十路前!!)だったので
一応敬語を心がけてみようと思ったものの、やっぱり未遂に終わってしまいました。
「わーごめんなさい。すいません」
「思いっきり棒読みじゃないですか!」
「嘘つけない子なの!正直者だから!」
軽く米神に手をやって盛大な溜息をつく伊集院先生。なんかむかつく。
「まだ小児科の子供たちの方が聞き分けありますよ!
高校生なんですからもっと落ち着きのある行動をしたらどうですか!」
「さりげなく小学生以下呼ばわりされたんだけど」
「悔しいなら大人しくしててください!」
私の手を掴んで病室へ引っ張っていく先生の後ろ姿に
そこはかとない哀愁なようなものを感じて、ちょっと不憫になった。
(まあ原因の8割方は私だと思うけどね!)
我が城(という名の個室)へ戻る途中で藤吉先生と目が合いました。
彼は困ったように笑うと小さく「がんばれよ」と言ってくれました。
私も笑って「はい」とだけ口を動かした。

「ちょっと座って下さい、さん」
「はーい」
すっかり小姑モードになった伊集院先生は止められそうもありません。
私は観念してベッドの縁へ腰掛けました。
それから数分が経ったころ、偶然廊下を通りかかった小高姉さまがストップをかけてくれなかったら
きっと延々小言を聞かされていたのでしょうね。
(伊集院くーん、そろそろ止めてあげないと嫌われちゃうわよーぉ)
(な、嫌われ…!)
しょんぼりする伊集院先生にばれないように、こっそりと姉さまは可愛らしく私にウィンクして去っていきました。
(かっこいいなぁ、小高姉さま…)
そして未だに肩を落としたままの彼も「大人しくしててくださいね…」と一言残して病室を去ろうとします。
私はその後ろ姿に声をかける。

「伊集院せんせ!秘密があるんだけど、教えてあげるよ!」

(先生いっつも色んな患者さんの為に走り回ってるから、こうでもしないと一緒にいてくれないでしょ?)

こっそり耳打ちして、にやり。


Hey!You!

08.4/6  嘘吐きロディ様の企画に献上させていただきました。生意気よ!!笑