「ねーぇちゃん、もう寝ちゃったの?」
「んー…寝てるんだから…放っておいてよ…」
「返事してるんだから起きてるじゃん」
「…じゃあ…今から寝る……」
「あっ!ちょ!冷たい!」
「…うっさいなぁ…」
「ご、ごめんなさい…」

壁の向こうから毎夜聞こえてくるのはパパとママの痴話喧嘩。
大概はパパが眠ってるママにちょっかい出して撃退されるという内容だ。
ママは低血圧だから一度寝てしまうと始末がつけられない程不機嫌になる。
結果なんて考えなくても分かるのに、それでもパパは果敢にアタックする。
十中八九失敗に終わるっていい加減学習したらいいのに。
そして朝になると決まって娘の私に愚痴る。実に良い迷惑である。

「もーママったら冷たいんだよ!パパはママの事大好きなのに!」

男の癖にべそをかきながら実の娘に泣きつく父親…世も末だ。
仕方が無いので適当に労いの言葉を添えて肩を叩き、そのまま自室へと引き上げる。
後ろからは「ちょっとー!話聞いてよー!」と情けないパパの声が聞こえたけど。
実を言えば話を聞く必要性なんてこれっぽっちも無いのだ。だってパパはママが大好きだ。
ママの事を愚痴るときも、その蒼い瞳はママへの愛情に溢れている。
多分、否何があっても、絶対に二人が離婚する事は、無い。
なんだかんだ言ってパパ、あのやりとり好きみたいだし。
ただ一つ心配な事は、あまりにもパパが報われないという事で。
夫婦だというのにこの片想いっぷりは一体何なんだ!?
これではパパが不憫過ぎる気がしてならない。
もしかしてママ、結婚して後悔してるとか…ないよね?どうしよう不安になってきた。
わ、私は望まれて生まれた子供ですよね…?
まさか出来婚とか!?うわぁパパやりそうで怖いなぁ。
そういえば二人の馴初めとか聞いたこと無いし。
そう思った私はパパがお風呂に入っている間にこっそりママに聞いてみた。
ちょっとした恐怖を感じながら。本当だったらもっと
「ママとパパってどうやって知り合ったの?」「もー恥ずかしいじゃない!」的な
キャッキャした雰囲気で聞きたかったんだけどなぁ…


「ねぇママ、パパと結婚して後悔とかしてない?今、幸せ?」
「なっ…!アンタ何言ってんの!」

ママは顔を真っ赤にしながら早口に言った。
やっぱりこんな話しちゃいけないよね、ごめんね、ママ。


「幸せに決まってるでしょ!!」


即答だった。ぽかんとする私を余所にママは矢継ぎ早に続ける。

「だってパパは優しくてカッコイイし家事だって何だって手伝ってくれるし
料理なんて私より上手じゃない。こんなに良い旦那なんて何処探しても見付からないわよ。
ママはすっごい幸せ」

頬を染めてはにかむママは娘の私から見ても凄く可愛らしかった。
少なくともママがパパと同じ気持ちでいてくれたことが嬉しくて
何だか私まで幸せに思えた。しかし

「…それパパの前で言った方が良いと思うよ…」
「はぁ!?」
「だってパパかわいそう…」
「……。」

ママは暫く黙った後、ぷいとそっぽを向いてしまった。
きっとパパとママはこれからもずっとあのままだと思う。

ママはツンデレ



何が凄いってコレ実話なんだよね。