「恋と愛の違いって何だと思う?」「は?」

素っ頓狂な声を上げた金髪の男は透き通るような碧の瞳を見開いてこちらを見た。
手に持ったワイングラスは空中で停止して、その拍子に中の赤がゆらりと揺れた。

「私には良く解らなくてね。経験豊富なお兄さんなら解ると思って」

ごくり、と私は赤を飲み込む。世間で稀に会話に昇るこの議題の答に、何千年も生きている癖に辿り着けない。
別に正解しなければいけないなんてことは無いのだが、ふとこの命題が頭を過ぎる事があるのだ。昔はどっちも変わらないと思っていたのに。
年をとると、ちっぽけな事など気にも留めなくなると言うが。

「…なんか意外だわ。ちゃんからそんな言葉が出て来るなんて思わなかった」
「アンタの中の私って一体どういうイメージなのかしらね」

素っ気ない私の返事にフランシスは困ったように笑った。青いリボンで一つに束ねらた金色がふわり。今日は髪を結っている。

「難しいね。俺もたまに解らなくなるよ」
「じゃあ自分なりの答は一応あるんだ?」

今日のちゃんは随分せっかちだなぁ、なんて言ってフランシスもグラスを傾ける。喉仏が小さく上下した。

「心が奪われるのが恋で、心が自由になるのが愛」

少し目を伏せてから真っ直ぐに私を見て彼は答えた。表情は柔らかい微笑みだったが何時ものへらへらしたものではなく、瞳から芯の強さが伺えた。

「そっかー…」
「満足のゆく答えでしたか、マドモアゼル?」
「じゃあ…」

返して貰わなきゃ、私の心。

ぽつりと、でもはっきり聞こえる声で呟かれた一言にフランシスはまた大きく目を見開く事になる。


The echo

(ねぇ、私の心、返してくれますか?)



個人的に恋は初々しくて、愛は成熟されてるイメージがあります。