藤吉先生は、ちゃんとご飯を食べているんだろうか。
最近いつにも増して忙しそうな先生は元々細身で色が白いから
なんとなく病弱そうな印象を受けるのだ。きっと言ったら怒られると思うけど。
心配です、なんて言ったら呆れられてしまうだろうか。(彼はしっかりした人だから)
今日も食堂に向かう途中で担当の患者さんに呼び止められて病室へ姿を消した先生を目撃した。
「どうなさいましたかー?」なんて優しい声が聞こえてきて尚更心配になった。
きっとあの後も食堂に行けなかったに違いない。
また倒れてしまったらどうしよう!なんてハラハラしながら過ごす毎日です。
ミキちゃんに言ったら何故か笑われてしまった。
(こっちは真剣に悩んでるのに!)(だぁって微笑ましいんだもん!)(は?)
「あ、お弁当作ってきてあげたら?」
「ぅえ!?」
「(悲鳴が…)悩んでるより行動した方が早いって」
「無理だ!」
私と藤吉先生は内科医で、ただ同じ現場で働く同僚だ。
ミキちゃんみたいにバチスタチームに入っている訳でもない。
そりゃあ会話は普通にしますが
「いきなりお弁当作ってくるとか驚くよ普通は」
「そっかなぁー」
君が羨ましいよ、ミキちゃん。私にもそれ位の度胸があったらなぁ。
溜息を吐いて物思いに耽る。本当に倒れてしまったらどうしよう。
「大丈夫かなぁ…藤吉先生…」
「俺がどうかしたのか」
「…ぅわ!?」
なんで毎回悲鳴が可愛くないんだ!
てかミキちゃんがいない。(あの野郎)
「お前こそ大丈夫か、」
「…それは頭の事でしょうか」
「さぁ?」
くすくす笑う藤吉先生の目にはやはり薄く隈が出来ていた。
(寝てないんですか)(可笑しいな私も内科医なんですが)
こうなったら、行動を起こすしかないんだろうか。
「…あぁもう!仕事変わりますから藤吉先生は休んで下さい!」
「え、ちょ、」
「それに最近ちゃんとご飯食べてますか?顔色だって優れてませんし、皆心配してるんですよ!」
(み、みんなってか、主に私、ですけど)
早口でまくし立てたら何故か鼻がつんとしてきて泣きそうになった。
そうか、私は感情が昂ると涙が出る人種なんだ。
「わ、分かったから泣くな!」
「ぅ、う…」
慌てて心配してくれている藤吉先生を見たら更に申し訳なく思えてきて、また涙が溢れそうになる。
「っ、ごめんなさ…」
「大丈夫だ、落ち着け」
子供扱いされている気もする。
頭を撫でてくれる先生の手が暖かくて幸せだけど複雑な気分だ。
「…そうだな、少し休もうか」
「はい…そうして下さい…」
「それでちゃんと飯も食べるよ」
「はい…」
「じゃあ弁当頼んだぞ」
「うん…って、えぇ!?」
なんでそうなるんですか…!
(あぁ、きっとさっきの話聞こえてたんだ…)
驚いて顔を上げたら藤吉先生は満足そうに笑っていた(騙された!)
「いや!私、料理下手なんで!」
友人や家族にも嫁の貰い手がなくなると散々馬鹿にされた私です。
(メスは使えるのにね)(何故だ)
そう考えると全く情けなくて情けなくて思わず俯いてしまう。
あー、わたし本当意味分かんないよ。
「…そんなに下手なのか?」
「どうせ嫁にもいけませんよ…」
「大丈夫だ、俺が貰ってやる」
(あれ、私また乗せられた?)